643 秘められた理由 ジェシカ・スティール

秘められた理由 (ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊 97)

秘められた理由 (ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊 97)

「二人で暮らせば」


婚約者に捨てられて後、父を亡くしたキンバリーは無気力になり引き籠り状態になった。しかし、弁護士が明かした父の遺言は、キンバリーにさらなる衝撃を与える。半年後までに結婚していなければ、屋敷を相続できないと言うのだ。
強引に誘われたパーティで、一人の男性に気付いたキンバリーは、彼を夫にできないかと考え始める。
友人の話では、彼はプレイボーイで飽きっぽい性格だと言う。それならば、離婚は簡単だろう。
スレイドはキンバリーをデートに誘い、キンバリーは嬉々と応じたが、いまだ婚約者デヴィッドを忘れられない彼女は触れ合うことに罪悪感を感じた。そして、彼女をベットに迎えるためには、結婚しかないという話になってしまう。スレイドは当惑するキンバリーをよそに、数日後には彼女の指に指輪をはめてしまった。
彼の望みはわかっている。だが、キンバリーは我慢できず、彼を拒絶してしまう。それでも、スレイドは彼女を尊重し、忍耐強く接していた。
やがて、キンバリーはスレイドを愛してしまったことに気付く。
いつか、彼が私に飽き、彼に捨てられてしまったら、もう二度と立ち直ることができないだろう。キンバリーはもう家など、どうでもよくなり、家から出て行く決心をする。
追ってきたスレイドは、彼女の誤解と疑惑を全て解決し、やっと二人はお互いに愛し合っていることを確認した。


「婚約の秘密」


ルーシーは兄ルパートが失くしてしまった母の形見の指輪に気付き、盗品売買だと確信する。警察に連絡する前に、それを買ったと思われる人物に話をするのが筋だと考えたルーシーは、ジャドという男性に会いに行った。しかし、ジャドは警察に誰から買ったか話す気はなく、もし指輪を取り戻したいのなら、三か月の間左手の薬指にはめていれば返すと言った。同意したルーシーは、ジャドから指輪を受け取ったが、彼の辛辣な物言いに傷ついた。
両親が亡くなったあと、自暴自棄になったルパートは、賭けごとにのめり込み、負債を大きくしてしまう。そして、ルーシーはルパートがジャドに指輪を売ったことを知った。彼女はジャドに指輪を返したが、ジャドはルーシーのためにルパートに仕事を世話し、寛大な条件で負債を返済できる手段を与えてくれた。
ジャドには感謝してはいたが、近くにいて彼に焦がれ、会うたびに侮蔑の言葉を受けるのは彼女には耐えられなかった。
自分にとって、ジャドがただ一人の男であることはわかっていた。ここで辛い思いをするより、離れた土地で別の人生を見つけよう。そう決心したルーシーは、ルパートの同意を得るが、その直後ルパートからジャドに書類を届けるよう頼まれてしまう。戸口で帰ろうと思っていたルーシーは、部屋に引き入れられ、ジャドと対峙することとなる。
ルーシーがこの地を離れることを知って、ジャドは結婚してくれと言った。愛していると。
ルーシーは耳を疑ったが、やがて幸福に包まれる。ルーシーが去ることを予想して背を向けたジャドの背中に、ルーシーは愛していると告げた。


冷静な仮面の下に愛する心を隠して、自らも傷つき、相手も傷つけてしまった男女の話です。