322 あの暑い夏の日に キャサリン・ジョージ

あの暑い夏の日に (ハーレクイン・クラシックス)

あの暑い夏の日に (ハーレクイン・クラシックス)

17歳のルーシーは苦しい恋をしていた。彼女はジョナスに会いたい一心で、彼の弟のサイモンと交際し、度々彼の家を訪れていた。ジョナスには美しい婚約者がいた。ジョナスはルーシーが美しい娘に成長したことを気付いていた。サイモンとテニスをした後、ルーシーが使うバスルームに、タオル一枚のジョナスがドアを開ける。二人は仰天し、同時にタオルを掴んでしまう。触れあってしまった惹かれあう二人は情熱に流された。ルーシーは進んで身を任せたが、ジョナスが自分を愛している訳ではないことを知り、泣き崩れた。ジョナスは深い後悔を感じた。やがて、婚約者は恋人と去って行った。ルーシーは妊娠したことに悩んでいたが、サイモンは結婚しようと言った。しかし、ジョナスはサイモンの結婚に反対した。そんな折、サイモンは飛行訓練で命を落としてしまう。打ちのめされたルーシーはジョナスに救いを求めるが、ジョナスはサイモンへの愛と嫉妬から彼女に冷たくしてしまう。ジョナスは自分の言ったことを後悔し、ルーシーに許しを乞おうとするが、彼女はジョナスを拒絶した。
10年後、ルーシーは村のアンティーク・ショップで細々と生計を立てていた。未婚の母になった事を責めることもせずに、支えてくれた父も亡くなり、息子のトムは寄宿学校に行き、ルーシーは一人だった。雪が降り注ぐ中、道に迷ったルーシーは側溝にタイヤを落とし、歩いて家に帰ったが、家は悲惨な有り様になっていた。電気はつかず、水道管は破裂し、重い雪で天井が落ちて来る。ショック状態のルーシーを訪ねてきたのは、彼女が最も会いたくない男だった。ジョナスは彼女の抵抗を抑え、自宅に連れて行った。家と車の修理にはお金がかかる。しかし、ルーシーには工面する手だてがなかった。ジョナスはトムを跡取りにするため、結婚すれば彼女の窮状を救うと言った。ルーシーはジョナスが自分に欲望を感じていることも、トムを欲しがっていることも知っていたが、愛されている訳ではないことに耐えられるかどうかわからなかった。しかし、トムは歓迎した。二人は結婚し、家族となったが、ルーシーの感じる憂鬱は増していった。そんなある日、トムが怪我し、血液型からトムがジョナスの息子であることがわかってしまう。どうすべきか、問題を棚上げにしたまま、体調の悪いルーシーを置いてジョナスは取材旅行へと旅立って行った。ルーシーの体調が悪かったのは妊娠のせいだった。ルーシーはその知らせをジョナスに書き送ったが、返事はなかった。しばらくして、ジョナスが乗った飛行機が事故に合ったと知らせが入る。遺体は無残な状態だった。彼の死を信じられない。気丈にルーシーは娘を出産した。ルーシーは家族と過ごせた10年をジョナスから奪ったことを深く後悔した。そして、クリスマスの前日、ジョナスが帰ってきた。ルーシーは泣きながら彼の胸に飛び込んだ。ジョナスは死にかけた時、絶対に生き延びて愛する家族の元に帰ることを誓ったと言った。二人はお互いの愛を確信した。ルーシーは初めて、自分にとって男性はジョナスだけだったことを告白した。


物語の進め方が秀逸。ぼちぼちホットです。美しいが、金とセックスしか望まない婚約者を疎ましく思いつつ、弟のガールフレンドに懸想する自分を抑えきれない。そして、弟に嫉妬し、ルーシーを傷つけたことを悔やみ、酒に溺れる。彼女に許しを乞い、彼女を手に入れたい。そのチャンスは10年後訪れた。