635 ルール破りの恋 エマ・ダーシー

ルール破りの恋 (ハーレクイン・ロマンス)

ルール破りの恋 (ハーレクイン・ロマンス)

アンの母はスターだったが、スキャンダルに塗れて亡くなった。アンにとっては、愛すべき少女のような無邪気な母だったが、公的にはドラッグ漬けの軽薄な女性と言われていた。アンは母譲りの美声を封印し、本名のエンジェルからアンに名前を変え、ビジネスの世界で暮らしていた。
個人秘書の選考で、マシューから一瞥されただけで選ばれたアンは、彼の傲慢な態度に怒りを感じる。不格好なスーツと眼鏡で、地味な外見を作ったアンは、ただ自分の技能だけを称賛して欲しいと望んでいたが、マシューの男性優位主義に図らずも挑戦してしまう。
しかし、マシューを知るにつれて、彼に惹かれている自分に気付く。彼に近付き過ぎるのは危険だ。
マシューの妹が、アンの後輩だったことで、アンの素性が明らかとなり、アンはますます頑なになった。
アンの仕事は完璧だった。綿密な準備の甲斐あって、年次総会は成功だった。最終日、アンは一人の重役の妻から、不愉快な情報を得る。アンは、信じたくなかったが、部屋に戻った時、マシューから高価な装飾品を贈られ、彼の目に欲望を見てしまう。
短期間のセックスの相手などにはなりたくない。
部屋に逃げ込んだアンを追って来たマシューは、彼女の下着姿を見て自制心を失った。彼女に唇を押しつけた彼は、アンの懇願に我に帰り、自分を誘惑しようとした重役の妻がアンに嘘を吹き込んだことを知った。マシューは、ただアンに感謝の気持ちを表し、喜ぶ顔が見たかっただけだった。彼は謝罪し、二度と彼女に手を触れることはないと誓った。
自分の部屋に戻って行くマシューを見送りながら、アンは彼を愛してしまったことを自覚した。そして、彼の言った自己欺瞞という言葉が脳裏を離れなかった。
自分に嘘をつくことなく、精一杯生きた母を思い、アンは自分を恥じた。自分を隠し、嘘をつくことはやめよう。もう、彼の下で働くことはできない。そう決意すると、アンの心は軽くなった。
アンがありのままの姿で、会社に行き、辞表を差し出すと、マシューは何とかして彼女を引きとめようとしたが、アンの決意は固かった。彼の愛以外、アンを留めるものはないと彼女は明らかにし、出て行った。
アンは母のエージェントに連絡を取り、歌の世界に戻ることを決めていた。
マシューは、かつて彼を裏切った女性を忘れられたように、アンのことも仕事で忘れられると考えていたが、無理だった。彼女が何でも構わない。彼女の全てが欲しい。
マシューはアンの家を訪ね、愛を告白し、結婚を誓う。そして、マシューのバックアップを得て、アンはスターとなった。


反発し合いながら、惹かれて行く男女の話です。