632 許されぬ密会 ミランダ・リー

許されぬ密会 (ハーレクイン・ロマンス)

許されぬ密会 (ハーレクイン・ロマンス)

9歳の時からセリーナはニコラスに夢中だった。だが、ニコラスがセリーナに目を止めたのは、母に促されて行くことにした卒業ダンスパーティーの時だった。その帰り、二人は情熱に流されて初めて異性を知った。熱にうなされるように二人はお互いを求めたが、ニコラスがピアノへの情熱を忘れることはなかった。イギリスに行くことになったニコラスは、同行を求めたが、セリーナは拒絶する。父が倒れ、母と会社を支えることができるのは、セリーナしかいなかったためだった。二人は別れ、セリーナはプロポーズされて、結婚を決めた。しかし、結婚式の支度の買い物でシドニーを訪れた時、ニコラスの演奏会が行われることを知り、行ってしまう。再会してしまった二人は欲望に囚われ抱き合った。ニコラスが目覚めた時、既にセリーナの姿はなく、残された手紙には結婚が決まっていると書かれていた。
未来のない関係は、諦めたはずだった。だが、セリーナは自分が妊娠していることに気付く。今更どうすることもできない。セリーナは全てを自分の胸に閉じ込め、グレッグの妻となった。
フェリシティはセリーナにそっくりだった。誰も秘密に気付かないように、セリーナは罪悪感を抱えて、毎日を生きていた。
そして、学校でチャリティー・コンテストが行われることになった時、行動的なフェリシティは地元出身の有名人としてニコラスに出席して欲しいと、母に内緒で手紙を送った。
文面に父親の死を見た時、ニコラスの胸は轟いた。セリーナに、もう夫はいないのだ。今度こそセリーナを失いたくない。
フェリシティのピアノは、父親譲りだった。ニコラスはセリーナが黙っていたことに激怒したが、それでも彼女を愛していた。
だが、セリーナはニコラスのプロポーズにノーと答えた。フェリシティを実の孫と思っているグレッグの両親やフェリシティ自身にも、ニコラスが実の父親であることは知らせられない。真実を言ったら、彼らを深く傷つけることになる。どんなに愛していても、そんな危険は冒せない。
ニコラスが立ち去った後、セリーナは涙に暮れた。哀しみの衣を纏う母親の姿に、フェリシティは話して欲しいと迫り、セリーナはこれ以上黙っていることができなかった。
フェリシティはニコラスに、また手紙を書いた。
母を愛しているなら、義理の父親になって、弟か妹を作って欲しいと。
翌年のクリスマスに、フェリシティは言った。
弟と別の姓を名乗るのは不自然だから、ニコラスの姓を名乗ることにすると。


愛し合いながらも、一緒になることができなかった二人。支えと永遠を求めた女と夢を追い求めた男は、十数年を経て幸せを手に入れるという話です。