631 一夜だけでも サラ・クレイヴン

一夜だけでも (ハーレクイン・ロマンス)

一夜だけでも (ハーレクイン・ロマンス)

有名作家の秘書として雇われたマリンは、その夫から襲われかけた挙句、誘惑したと責められ解雇されてしまう。仕事も住む所も失ってしまったマリンは、義姉リンの家にしばらく滞在することとなる。入浴中、家にやって来たのは、リンのボス、ジェイクだった。
ジェイクは過去の恋人に悩まされていた。結婚を望むダイアナは、ジェイクから拒絶されて別の男性を見つけ結婚したが、結婚後もジェイクとの関係を続けたいと告げ、またもジェイクにはねのけられ恨みを持っていた。嫉妬深い夫にジェイクとの関係をほのめかし、商談を破綻させてやるとジェイクに告げる。
商談をまとめるためには、盾が必要だ。リンの留守を知って、ジェイクは同伴してくれれば相応の謝礼はすると言い、自分の所有する家にマリンが滞在することも大目に見ると言った。
彼の恋人として数時間我慢するだけだ。しかし、ダイアナは週末のハウスパティーに彼ら二人を招待した。
マリンは自分が怖かった。彼に惹かれてしまっている。でも、彼を窮地に陥らせられない。恋などしたこともなかったマリンは、ジェイクを求める気持ちを抑えようとするが、部屋に二人きりとなった時、ジェイクの前に身を投げ出してしまう。
翌朝、マリンを見たダイアナは、ジェイクの憐れみを受けて男を知ったと嘲った。確かに、ジェイクはマリンを抱くつもりなどなかったと、マリンは自分を嫌悪した。自分を守るために、マリンはジェイクに仕事は終わったと別れを告げた。
そのまま派遣された仕事に就いたマリンは、一ヶ月後リンのもとに戻り、ジェイクが訪ねて来る。体調が悪いというマリンに、ジェイクは妊娠検査薬を差し出した。そんなはずはない。だが、検査は陽性だった。そして、ジェイクは子供のために結婚すると言った。
彼が私を愛していないことはわかっている。彼の傍にいたら、私が彼を愛していることを知られてしまう。いつか飽きられ、子供の母親という役目でしか価値のない女の愛ほど要らないものはないだろう。
マリンは、ジェイクの傍にいることを拒んだ。
報われない愛を抱えて苦しむマリンは、やがて流産してしまう。
ジェイクの義務は消えた。マリンは、ジェイクに離婚を切り出し、母の家での療養の後、離婚することで同意を得た。
ジェイクはマリンに一目惚れだった。強引に彼女を連れ出し、彼女こそ探していた女性だと確信したジェイクは、時期を見て彼女にプロポーズしようと決意する。しかし、自身の欲望に負けて彼女の純潔を奪った翌朝、別れを告げられ、地獄に落とされた。あの素晴らしい一夜を過ちだというマリンを手に入れたい一心で、ジェイクは彼女の妊娠を理由に指輪をはめた。しかし、触れることも許されず、流産の後は、離婚を告げられた。離婚することでマリンが幸せになるなら構わない。でも、彼女がいなければ自分は不幸だ。
ジェイクに光明を与えたのは、三人の女性の言葉だった。
マリンの母は、マリンがジェイクを恋しがっていると言い、ジェイクの母は、マリンが切ない目でジェイクを見つめていたと教えてくれた。そして、リンはマリンが心が伴わなくては身体を投げ出したりしない女性だと言った。その一縷の希望にすがりついて、ジェイクはマリンのフラットを訪れ、彼女に自分の心を明かす。
どんなにお互いが誤解していたのかを、マリンは知った。唯一欲しかったジェイクの愛を受け、マリンは彼を真実の夫とした。


内気で無垢な女は、プレイボーイに恋して、一度だけの喜びを自分に許すが、報われない愛を忘れようとする。愛し合う両親の元で育った男は、母のように夫を心から愛する妻を求め、浮名を流すが、みつからないと諦めかけた時、マリンと出会う。二人は愛されたいと思っていたが、愛を告白することができず、悲嘆に暮れるという話。あほらしいと言えば、あほらしい話です。