633 花嫁のためらい スーザン・フォックス

花嫁のためらい (ハーレクイン文庫)

花嫁のためらい (ハーレクイン文庫)

父親のとってコリーはただの働き手で、彼が亡くなるまで娘として愛された記憶は全くなかった。一人で小さな牧場を切り盛りし、泥と埃にまみれたコリーに女であることを自覚させたのは、隣の大きな牧場の息子ニックだった。ニックの弟シェーンは、コリーの親友だったが、ニックと彼の父親は二人が恋人であると決めつけ、コリーが相応しい家柄でないことを理由に、別れるように言った。
ニックに恋していたコリーは傷ついた。そのニックの言葉は、ニックがコリーを求めることはあり得ないと暗に告げているのと同じだった。コリーは自分の本当の気持ちを知られずに済んだことに安堵し、着飾ったり、化粧しようと考えていたことも忘れようとした。
6年後、シェーンが帰って来る。そして、コリーと再会した時、大人になった彼女を見て、シェーンは突然彼女を女性として考えるようになった。ニックは戻って来たシェーンが、共同経営者になることを拒むのは、コリーのせいではないかと疑いを持った。確かにコリーと結婚すれば、小さいながらも牧場の経営者になれるし、自分一人の判断で様々なことができるだろう。しかし、そんなことを許すわけにはいかない。
様子を探ろうとニックはコリーを訪ね、彼女の魅力に気付く。思いつきでニックはコリーを食事に招待した。三人で食事すれば、二人の関係がどれほどのものかわかるはずだ。シェーンが帰宅しなかったために、二人きりで過ごした時間は、思いのほか楽しかった。しかし、コリーはニックの意図に気付いて激怒した。卑怯な手口を使わずに、シェーン本人に聞けと言って帰ったコリーは、バックを置き忘れ、反省したニックは謝罪と共にそれを届けた。
コリーに惹かれるニックは、種馬を見に行くと彼女を誘い、コリーは初めて女性として扱われ舞い上がった。二人の間の緊張感は高まり、ニックはコリーの唇を奪った。
コリーは怖かった。彼が真剣な交際を望んでいるはずはないのに、自分は彼に逆らうことなどできないのだから。シェーンは薄々感じていた危惧が真実であることに気付く。コリーを守りたい思いで、シェーンは兄に問い詰めた。純真なコリーを傷つけたら許さないと。兄弟は、どちらがコリーを射止めても、遺恨を残さないと約束した。
しかし、コリーは二人にお互いの問題が解決するまで、逢いたくないと宣言する。父から牧場を任された罪悪感を持つニックと、兄の大きな存在感に反抗的なシェーンが、解決策を捜そうと努力しないのは大きな損失だと教え、考え方の違いを理解しろと言った。
二人からの連絡のないまま時間は経過して、儚いロマンスも古い友情も消えてしまったと、コリーは落ち込んだが、ニックを忘れることはできなかった。
それでも、新しいドレスで協会に行ったコリーは、昔のクラスメートからデートに誘われて楽しい時間を過ごし、自分に自信を持った。こうやって前に進んでいけばいい。
そして、ある日留守番電話に、二つのメッセージを受け取った。二人は同じ日の7時と8時に訪ねると伝言を残していた。シェーンとの友情は消えていなかったのだ。コリーは、興奮と安堵に震えたが、ニックが来訪する理由がわからなかった。
7時にやって来たニックは、シェーンの独立を許したと言った。そして、彼女に渡したいものがあると告げる。ニックがポケットから取り出したのは、ダイヤの指輪だった。ニックの問いに、コリーは17歳の時から好きだったと答えた。ニックは愛を告白し、プロポーズした。
轟くエンジン音で、彼らのキスを遮ったシェーンは、指輪に気付いて祝福したが、兄に釘を刺すことは忘れなかった。


父親は、金持ちの息子に関わったら、弄ばれて捨てられるだけだと言った。初めて恋心を感じた相手には名家の花嫁になれるような女性でないと言われ、関心を持ってくれた男性もいない。デートはおろか、キスさえしたことのなかったコリーが、ハンサムな兄弟からアプローチされ、戸惑い、成長していく話。