630 愛に惑うプリンス サンドラ・マートン

愛に惑うプリンス (ハーレクイン・ロマンス)

愛に惑うプリンス (ハーレクイン・ロマンス)

マリアの描いた案が最終選考に残り、彼女はアリスト王国に招かれた。食事をするために店を捜していたマリアは、魅力的な男性アレックスに出会い、彼と一夜を共にしてしまう。翌朝、幼馴染のホアキンに、経過報告をしたマリアは、アレックスから言われのない批難を受け、追い出される。
アレックスは、マリアの電話を耳にし、彼女がティア王妃の宝飾を作る栄誉を得るために、プリンスである自分を利用しようとしたと激怒していた。
そう、彼こそ、アリスト国の王子だったのだ。
マリアの母は、働いていた会社の社長と不倫関係に陥り、マリアを身籠って、僅かばかりの手切れ金と共に追い出され、彼女を産んだ。そのことで、母はいつもマリアを責め、堅実な職業に就くようマリアに言い、生活の全てをマリアに依存していた。
好転するかに見えたマリアの生活は、アレックスの誘惑に乗ってしまってから、全てが悪い方向に転がって行くようだった。
ティア王妃の誕生記念に作られる予定だったネックレスのデザインを手がけることが決まっていた職人に不手際が起き、アレックスは国王からマリアに仕事を依頼する手配を任されて、動揺する。この二カ月、マリアのことを思い出さない日はなかった。彼女への怒りと、欲望のせいで、アレックスは気が狂いそうだった。
マリアの部屋を訪れたアレックスは、ホアキンを彼女の恋人と決めつけ、契約書類へのサインを強要する。現状を考えれば、仕事を受けることが正しい。だが、アレックスの傍にいることは危険極まりない。言われるままサインしたマリアは、自分が読まなかった書類に、滞在中彼の愛人となると書かれていたことを知って唖然となった。あまりに卑劣な取り引きに、マリアは呆然とするが、後の祭りだった。
連れて行かれたのは、アレックスの屋敷だった。
しかし、アレックスは自分の卑劣な行為に嫌悪していた。冷静になったアレックスは、マリアが自分に純潔を捧げてくれたことに気付き、彼女とやり直すことを決意する。
完璧なものを作るために、マリアはアリスト国の宝冠を見たいと願い出た。国王はしぶしぶ、それを承諾し、5分だけという約束でマリアの前に宝冠を差し出す。
マリアはそこに嵌めこまれたステファニ・ダイヤモンドが偽物であることに気付いて、ショックのあまり、それを口にしてしまう。マリアの言葉を聞いて、蒼白だった王は、胸を押さえて崩れ落ちた。
だが、国王は王妃の式典を予定通り行うと言い張り、祝賀会の最中、容体が悪化する。
国王に呼ばれたマリアは、国王からマリアとアレックスが愛し合っていることは明白だと言われ、アレックスのために身を引くよう要求される。彼の身体は、国のためにあり、義務と責任があると。マリアが約束すると、アイゲウスは安堵し、そのまま息絶えた。
アレックスは姿を消してしまったマリアを、愛してなどいなかったと自分に言い聞かせたが、容易ではなかった。
数日して、ティア王妃に呼ばれたアレックスは、母から愛を逃してはいけないと諭され、マリアを追うことを決意する。
アレックスから愛を告げられ、プロポーズされて、マリアは思った。アイゲウス王が息子に期待した彼の将来は、冷たく空虚な人生だった。危険を冒さない人生に価値はない。
マリアはアレックスに笑いかけ、イエスと答えた。


ダイヤモンドの迷宮シリーズの第一話です。621で紹介した話のセバスチャンはアレックスの兄、アレックスは次男です。そして、629がこのシリーズの最終話になります。要約すると、アイゲウスは召使いと恋に落ち、密かに結婚して、彼女に王家の証ステファニ・ダイヤモンドを与え、金庫に偽物を隠していた。そして、王妃として家柄の相応しい女性を迎え、子供を産ませ、本当の妻とは年一度きりの逢瀬を繰り返していた。しかし、妻は妊娠をきっかけに、王の前に姿を現すことなく、密かに娘を産み、カリスト王国に立てた家で父の名を明かすことなく亡くなってしまう。娘は、それが王位継承者の証だとも知らず、母の形見として身につけ、王宮で下働きとして働いていた。つまり、カリスタとアリストに分かれる前のアダマス王国の末裔の嫡出子は、彼女一人だったのだ。という話です。壮大な話と言えるのかしら?色んな作家が順番に書いていますが、セバスチャンの話が、私は一番面白く感じました。あと、アリストの二人の王女の話と、ザカリの弟の話があります。