354 私という名の他人 マーゴ・ダルトン

私という名の他人 (ハーレクイン・スーパーロマンス (S266))

私という名の他人 (ハーレクイン・スーパーロマンス (S266))

リーは4歳で天涯孤独となり、心の拠り所だった人形を不潔だという理由で取り上げられたことを皮きりに、優しさも思いやりも与えられないまま育てられた。10代の初めに、里親の息子から凌辱を受け、心に傷を負ったリーは、里親の元を逃げ出して、自分の機智だけを頼りに大きくなった。バーテンをしながら、バーテンダーの資格を取るために勉強していたリーはポールと知り合う。ポールはリーに一目惚れし、リーは彼が裕福であったために、彼の妻となった。リーは贅沢な生活に溺れたが、二人の結婚生活はポールが望んでいたものとは違っていた。やがて、ポールは離婚を決意し、リーは彼を憎むようになった。
そんなある日、リーが暴漢に襲われ、酷い怪我を負い、記憶を失くしてしまう。目覚めたリーは、個人的な記憶を全て失い、自分の名さえ思い出せなかった。何もかもが、初めての体験だった。ポールは、離婚を阻止しようとするリーの策略だと信じていたが、突き放すことはできなかった。家に帰ったリーは、周囲の態度や自身の日記から自分が酷い女だったことに気付く。最初、疑いを持っていたポールだったが、以前の冷淡な女とは別人のリーに惹かれていく。やがて、幼い頃の記憶から徐々に思い出すにつれて、リーはポールへの愛に目覚めて行った。家政婦の娘ポニーが襲われる場面を目撃した時、それまでの記憶が全て甦り、激しい怒りを覚えたリーは少年に襲いかかり撃退する。難を逃れたポニーを慰め癒したリーは、自身の怒りと憤りも癒されたことを知った。一人になって、順を追って記憶を辿ったリーは、甦った事実に茫然となった。離婚を言い渡された自分は、夫を憎み、彼を殺す計画を立てていたのだ。そして、それは決行されてしまう。自身の罪は自分で償わなくてはならない。決意したリーは、ポールがいる山小屋に向かった。愛し合った後で、リーは記憶が全て戻ったことを明かした。自分に欲望を感じる男性を憎み、彼に辛い思いをさせたことを謝罪し、深く愛していることを話した。ポールは、リーが辛い過去を乗り越えたことを喜び、二人の幸せを確信したまま眠りに落ちた。早朝、リーはベッドを抜け出し、ポールの衣服を身につけて、ポーチに立った。銃声が聞こえ、リーは地面に叩きつけられ意識を失った。ティムは双眼鏡を見てそれがリーであることを知った。彼女を助けなくては。走り寄ったティムをジョーは罵った。そして、ポールを撃つために、ライフルを掲げた。ティムは激しい衝動を感じて、ジョーに飛びかかり、ライフルを奪ってジョーを殴りつけた。ティムとポールはリーを病院に運び、彼女は一命を取り留める。目覚めたリーは、医師に全てを告白し、ポールに彼女が犯した罪を話すよう告げた。自分を殺そうとした妻など誰も欲しがらない。しかし、病室にやって来たポールは、彼女を愛していると告げた。辛い記憶を取り戻して、なお、ポールを守ろうと命まで差し出そうとした勇気。自分の苦しみだけ見て、彼女を助けようとしなかったことをポールは恥じていると言った。素晴らしい未来が二人に訪れようとしていた。


里親制度の悲惨な話って、HQに多いみたい。現実はどうなんだろう?ともかく、とても面白い物語でした。