628 真夜中のあとで アイリス・ジョンソン

真夜中のあとで (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

真夜中のあとで (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

高名な医師であり、医薬会社の社長でもあるノアは、自身の研究施設で偶然、特効薬RU2を発見する。しかし、その薬に対する拒絶反応の除去に苦労していた。医学書で、ケイトの記述を読んだノアは、彼女こそ救世主だと確信して、破格の報酬でケイトを引き抜こうとするが、彼女はどんな誘いも拒絶した。ノアは焦っていた。巨大製薬会社を経営するオクデンが、RU2を狙っているらしい。
オクデンは、全ての病に効力を発揮する薬など、闇に葬るつもりだった。手始めに、オクデンは手下のイシュマルに命じて、ノアもろとも会社を爆破した。辛くも、親友トニーに助けられたノアは、密かにケイトの元に急いだ。だが、ケイトの元夫マイケルの車が爆破され、マイケルが亡くなる。墓地で、ノアはケイトを捕まえ、彼らの標的がケイトであることを知らせるが、彼女は信じなかった。イシュマルは、ケイトと彼女の息子ジョシュア、そして同居するマイケルの母フィリスの三人を殺すために、家に押し入るが、ケイトの反撃に合い、逃走する。
ケイトにとって、何よりも大事なのはジョシュアだった。彼女は、ノアの助言を聞き入れ、ジョシュアとフィリスの安全と引き換えに、共同研究を引き受ける。
セスはノアから、彼らの護衛に雇われ、次第に彼らに魅了されて行った。薬が完成し、ノアは自分の弁護士でもあったトニーに会いに行くが、そこにはイシュマルが張り込みをしていた。イシュマルはケイトに執着しており、彼女の居場所をノアから聞き出そうとするが、隙を見て逃げようとしたノアを撃ち殺す。
ノアが死んだ知らせを聞いたセスは、隠れ家から逃げる必要を感じる。セスの説得で、ジョシュアとフィリスは核シェルターに隠れ、ケイトは表舞台に出る決意をする。
だが、オクデンはさらなる妨害を加えようとしていた。認可を勝ち取るために、ケイトはマスコミを利用し、清廉潔白な代議士を味方につけた。だが、その代議士までもがイシュマルの餌食にされてしまった。もう打つ手はないのか。
ケイトはイシュマルの誘いに乗り、彼に闘いを挑み、勝利を納めた。
セスは、オクデンの部下を操り、仲間割れを起こさせ、自滅させることに成功する。
反対派の頭だった代議士の秘密を、嗅ぎ取り、ケイトは彼に選択を突きつける。
あとは、認可の容易なアムステルダムで、研究を再開するだけだ。
もうひとつ、ケイトには欲しいものがあった。セスが欲しい。彼に愛されていることはわかっている。でも、根なし草のようなセスに永遠が期待できるのだろうか。
結婚して欲しいというケイトの言葉に、セスはたじろいだが、イエスと答えた。


息つく暇もない展開に、もう止まらない、やめられないという感じです。穏やかに包まれる愛を感じさせるノアと、強烈な欲望を感じさせるセス。二人の男に望まれていることを知って、ときめきと狼狽を感じるケイト。周囲の罪のない人々が、殺されて行く中、ケイトは怒りと決意に燃え、逆境に立ち向かう。すごく、面白かった。いい作品です。