610 罪を忘れた恋人 サンドラ・マートン

罪を忘れた恋人―華麗なるシーク〈3〉 (ハーレクイン・ロマンス)

罪を忘れた恋人―華麗なるシーク〈3〉 (ハーレクイン・ロマンス)

サリムは部下と情事を楽しむことは禁忌としてきたし、グレイスは好みのタイプではなかった。だが、身体に渦巻く欲望は、いつしか手に及ばなくなり、彼女を愛人としてからも増すばかりだった。
シークであるサリムは、自分が手に入れられる男性ではないと知りつつ、グレイスは彼を愛していた。しかし、彼の態度がおかしいことに敏感に気付いていたグレイスは、財務部長の口からサリムが、グレイスの後釜を探し始めていると聞いて、この未来のない関係に終止符を打つ決意をする。
自分の留守中に、グレイスが姿を消し、同時に多額の現金が消えた事実に、サリムは愕然とする。サリムは探偵を雇い、グレイスを探し出し、自ら彼女を捕えに赴いた。
出張先の孤島で、不愉快な上司の情夫にされるか、愛する傲慢な元上司に同行するという二者択一しかない状況では、グレイスは、サリムを選択するしかなかった。そして、サリムが、グレイスを泥棒だと考えていることを知って、激怒する。
だが、二人の乗った飛行機は墜落し、頭に傷を負ったグレイスは記憶を失ってしまう。幸運にも、二人は個人の屋敷に歓迎されたが、嵐のために外界から隔離されてしまう。
サリムは、グレイスと過ごすうちに、彼女への思いが、自分の目をくらましていたことに気付いた。横領したのは、財務部長だ。だが、サリムが事実に気付いた時、グレイスの記憶はよみがえり、交通は復帰する。
サリムは、グレイスを送り届けるしかなかった。サリムの愛の言葉も、役には立たなかった。何を送っても、グレイスはそれをどこかに寄付してしまい、施設から感謝状が来る。それでも、サリムはグレイスの心を取り戻したかった。
記憶を亡くしたグレイスと二人で眺めた美しい夜空を、ガラスの玉に模倣して、サリムはグレイスに会いに行った。もう一度、チャンスが欲しい。
ガラス玉を見て、グレイスは涙を流し、立ち向かわずに、ただ姿を消した自分も悪かったのだと言った。愛し合う二人は、やっとお互いを手に入れた。


真偽を確かめることなく結論を急いだあまりに、相手の真意を見誤った二人。あきらめない不屈の闘志がなければ、成就しなかったでしょうね。