551 砂塵に舞う花嫁 ペニー・ジョーダン

砂塵に舞う花嫁―砂漠の恋人 (ハーレクイン・ロマンス)

砂塵に舞う花嫁―砂漠の恋人 (ハーレクイン・ロマンス)

カトリーナは自分に執着する男から逃れようとして、盗賊団の前に飛び出し拉致される。彼女を捕えたのは、前日に町で見かけた不審な男だった。その男の侮蔑に満ちた視線に、カトリーナは苛立つが、どこにも逃げ場はなかった。
ザンダーは兄である国王の暗殺計画を阻止するために、盗賊団に潜入していた。外国からの客人を守ることは、義務だが、偽りの身分に不信感を持たれることは危険だった。
二人はお互いに軽蔑すべき相手に惹かれる自身に嫌悪していた。
カトリーナを手に入れ損なった男は、諦めることなく、ザンダーの売値の倍出すと提案した。解決法は一つしかない。ザンダーは、妻にするつもりだから、できないと答えた。売られるか、妻になるか、二つに一つ。カトリーナには自分の運命が信じられなかった。茫然とするカトリーナに、これは真実の婚姻ではないとザンダーは告げた。しかし、頭ではわかっていても、厳粛な部族式は二人の心に何かを訴えかけた。ザンダーの私物の中に国王の紋章がついた本を見つけたカトリーナは、ザンダーを卑しい盗賊と詰り、母の形見を盗品と言われたことに激怒したザンダーは彼女の口を封じるために唇を押し付けた。
これまで耐えてきた欲望が、解放を求めて襲いかかった。カトリーナの中に身を沈めた時、ザンダーは彼女がバージンであったことを知る。ザンダーのショックを拒絶と受け取ったカトリーナは、ザンダーを卑劣な男と言い、ザンダーの罪悪感を煽った。
暗殺計画は進行し、キャンプに内務大臣ナージルが訪れる。ザンダーは知らせを走らせ、手配を待っていた。だが、頭を占めているのはカトリーナだった。注意はしていたものの、ナージルに見咎められたザンダーは窮地に陥る。正体を知られる訳にはいかないが、向けられた銃は彼を狙っている。
カトリーナはそれを目撃して、心が命じるまま銃の前に身を投げた。
目覚めた時、カトリーナは病室にいた。彼女は腕を撃たれてはいたが、酷い傷ではなかった。看護婦から盗賊団が捕えられたことを聞いたカトリーナは、ザンダーを救いたいと切望する自身に気付いた。
王妃が謁見を望んでいると教えられ、王妃の前に出たカトリーナは、ザンダーの罪を軽くして欲しいと願い出る。しかし、病室に戻った時、点きっぱなしになっていたテレビの画面にザンダーの姿を見て騙されていたことを知った。もうここにはいられない。自国に戻るために、タクシーを頼んだカトリーナは、迎えに来たリムジンに乗り込んだが、車に王宮に連れて行かれ、そこにはザンダーが待っていた。国王の命で、正しい婚姻を結ぶという話にカトリーナは、唖然とした。成す術なく二人は夫婦として認められ、ハネムーンに向かう。案内されたヴィラは美しかった。心を通い合わせることなく、毎夜抗えない欲望だけを満足させる日々。その屈辱感に、カトリーナの心は蝕まれて行く。愛しているのに、これ以上彼に辱めを受けるのは耐えられない。そのカトリーナの独り言を、ザンダーは耳にする。ザンダーは逃げようとするカトリーナを捕まえ、その言葉を繰り返させた。愛は人を傷つける。自分も愛ゆえに傷ついていたことを、ザンダーは明かした。ただ一つ欲しいものは、カトリーナの愛だと。二人は愛し合っていることをお互いに認めた。


心が求めていたものが、正しかったって話かな。