519 愛の記念日 リン・グレアム

愛の記念日 (ハーレクイン・ロマンス)

愛の記念日 (ハーレクイン・ロマンス)

ホープはずっと母の看病をしていた。看病に疲れた父が家を出て行き、兄ジョナサンが離れた土地で家庭を持っても、一人きりで看病を続け、やがて看取った。そして、遺産を残されたのが兄一人だと知った後も、兄から家を売ると聞かされた時も楽天的なホープは、何とかなると思っていた。しかし、住む所も仕事も見つからないことに、自分が世間知らずであることを痛感させられる。不首尾に終わった面接の後、道に迷ったホープは、近づいて来る車に自分を気づかせようと、道から乗り出すが、スピードを出していた車は、ホープを避けた直後木に衝突して大破してしまう。
アンドレアスは茫然と立つ女性を抱えて、側溝に倒れ込み罵り声を上げた。携帯電話もない、近くに民家もない。側溝でずぶぬれになってしまったホープに気付いて、アンドレアスはカーブを曲がる前に見た納屋に彼女を連れて行き、火を起こした。欲望が頭をもたげた。こんな性急な欲望は初めてだった。いけない事とは知りつつ、ホープアンドレアスに純潔を捧げた。
ホープはロンドンに移り、アンドレアスが用意してくれたアパートに住み、デザイン学校に通い始めた。そして、二年後、ホープは疑念を持ち始めた。アンドレアスは別の家に住み、彼の友人や家族に会わせようともしない。公の場に連れて行ってくれたこともないのだ。ホープの不満に気付いたアンドレアスは、妹エリッサの新居披露のパーティに行こうと誘い、ホープは前進したと安堵した。しかし、エリッサは会った途端、ホープを嘲り、彼女を娼婦と呼んだ。意気消沈したホープはざわめきを避けて、静かな部屋で気を落ち着けようとして、エリッサが夫ではない男性とキスしているのを目撃してしまう。エリッサはホープに、アンドレアスに言いつけたら後悔させてやると脅したが、ホープは誰にも言うつもりはなかった。だが、エリッサは先手を打ち、アンドレアスに、ホープが友人ヴァネッサの従兄弟ベンと関係を持っていると告げ、アンドレアスはそれを信じ込む。アンドレアスはホープの話を聞こうともせず、彼女を責めたて、部屋から出て行けと告げた。
アンドレアスの口から、自分はただの愛人にすぎなかったと知らされて、ホープはショックだった。ヴァネッサの家に身を寄せたホープは、やがて妊娠に気付く。いくら、冷酷で傲慢な男でも、アンドレアスには知る権利がある。だが、打ち明けられたアンドレアスは、ベンの子供だと決めつけ、欲しいのは金かと言った。アンドレアスからは何も欲しくない。
自分の人生からホープを追いだした後の、アンドレアスの日々は悲惨なものだった。ホープを許せないと思いつつも、彼女を追いかけるのを止めることはできなかった。そのうち、もう妊娠6カ月になると聞いたアンドレアスは、自分の子供である可能性は高いと知り、いまだ求めてやまない彼女を、もう一度自分のベットに誘いこもうとする。
ホープはろくでなしだと思いつつも、彼を愛することを止められなかった。
エリッサが嘘を告白した時、アンドレアスは愕然とするが、それでも、ホープとベンの仲を疑い続けていた。自分が彼女を捨てた後、ホープはベンのものになったかもしれない。だが、彼女は自分の子供の母親だ。正しいことをしようと決意したアンドレアスは、彼女が好みそうな家を捜し、助言を求めるという口実でホープを連れ出した。家は素晴らしかった。夢中になっているホープを見て、計画の成功を確信したアンドレアスは、ホープに結婚を切り出した。ホープは突然のプロポーズに喜んだが、自分を愛してくれない男性と結婚するつもりはなかった。アンドレアスは、拒絶されて憤慨したが、彼女を深く傷つけていたことに、改めて気付かされる。素晴らしい夫、父親になれることを、彼女に示そう。
アンドレアスは、彼女を気遣い、世話を焼き、親族に紹介した。
ある日、出張に出かける前に電話をしたアンドレアスは、ベンが来たからと切られた電話に怒りを感じる。自制心を失ったアンドレアスは、出張を取りやめ、ヘリを呼んで、家に飛んだ。いきなり帰って来たアンドレアスの姿にホープは驚く。ベンは恋人を連れて来ており、用事があると早々に帰って行った。戸惑うホープに、自分が嫉妬していることを、アンドレアスは明かした。ホープは笑って、嫉妬する必要などないことを言った。ベンとは何もなかったのだからと。自分が彼女の唯一の男であることを知って、アンドレアスは感激し、初めて彼女を愛していると告白する。気が狂いそうなほど愛しているのに、結婚してもらえないと。ホープは結婚に必要な条件が満たされたことで、断る理由などなかった。承諾を得ると、アンドレアスは迅速に行動し、彼女を妻にした。


27歳まで母親の看病に明け暮れ、世間の荒波に乗り出した彼女は、偶然傲慢で魅力的な男性に囚われてしまう。彼にバージンを捧げ、ルールブックを焼き捨てた彼女は二人は同等であり、恋人だと信じようとしていたが、やがて真実に気付かされる。自分は彼の後ろ暗い存在で、未来などありはしない。こんな寛大な女性っている?普通こんな扱いされたら、絶対許さないと思うけどなぁ。