妄想その6(仕組まれた賭博)

久美子は深く後悔していた。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。てつとミノル相手に独り勝ちしていた久美子はつい調子に乗って「今度勝ったら何でも欲しいものやるぞー!」と言ってしまったのだ。だけど、それが何で差しの勝負になっちゃったんだ?よくわからんうちに、慎がしゃしゃり出てきて有り金全部持ってかれた上に「何でも欲しいものだったな!」と不気味な笑顔を見せられたのだった。お祖父さんが出かけてちょっと開放的になった挙句にこのザマだ。
風呂場から出た久美子にてつとミノルが玄関から「ちょっと一杯やってきまーす。」と言うのが聞こえた。薄給の私から巻き上げた金で・・・・ちくしょう・・・。ぎりぎりと歯ぎしりしながら久美子は自室の障子を開けた。
薄暗い部屋にぽつんと一つ布団が敷かれている。久美子は目を疑った。こんもり盛りあがったシルエットはそこに誰かがいることを表している。覗き込んで見ると慎が静かに寝息を立てていた。どうしてコイツがここにいるんだ?ちびちび飲んでいたから酔っぱらったのか?慎がどの程度飲んでいたのかは全く注意していなかったのでわからなかった。
(しっかし、ホントにコイツ綺麗な顔してるよなぁ)
閉じた瞼に長い睫毛が濃い影を落としている。少し緩んだ口元は誘っているかのようだった。久美子は傍らにしゃがみ込んでこの事態をどうすべきか思案していた。酔っぱらって寝込んだとすれば起こすのは可哀想か・・・・。だけど、そしたら私はどこで寝ればいいんだ?コイツの隣に潜り込むか?いやいや、そんなイケナイ(楽しそうな)ことは教師として恥ずべき行為だ・・・。
悶々とする久美子は反応が遅れた。気がつくと慎に両手を掴まれ組み敷かれていた。「お前さ、今ちょっとムラムラしてただろ?」慎の顔を見つめていたことを知られて久美子は狼狽した。「こ、ここで、な、何をしてるんだ。」動揺する久美子はどもりながら上ずった声で言った。
「担保貰っとこうと思ってさ。」久美子の上に慎の唇が降りてきた。
「俺、お前貰うから、とりあえず今日は担保に処女貰っとくわ。」唖然とする久美子に慎は続けた。「普通に迫ったって蹴り入れられるのが落ちだからな。我慢してたんだぜーっ。お前もいい年なんだからいつまでもそんなもん大事にとっとくなよ。」「べ、べつに大事にとっといたわけじゃない!」久美子は自由になろうともがいたが意外に慎の力は強かった。
「女に二言はないはずだよな。それとも、手錠でもかけるか?」
久美子から力が抜けた。「わかった。好きにしろ。」
潔く言ったものの久美子は震えていた。慎がパジャマのボタンをはずし両手で胸を包むと久美子の全身が朱に染まった。頂を口に含まれて久美子は喘いだ。慎の手がパジャマの中に潜り込む。目をぎゅっを瞑って下唇を噛んでいる久美子の顔を見つめながら慎はゆっくり指を動かしていた。「ん、ん、ああ、う、うん、あ。」堪えきれず漏らし始めた声に指の動きが加速する。久美子が身を震わせ叫び声を上げたあと、きつく抱き締めながら慎が言った。「お前、結構かわいい声で鳴くんだな。」
慎はその余韻で陶然としたままの久美子から身に纏うすべてを剥ぎ取っていった。「俺、もう我慢できそうもねぇ。」突然の激痛に久美子は呻いた。慎は久美子の中に深く身を沈めたまま動きを止めた。荒い息の中で自重したような笑みを浮かべている。
「かっこわりいな。童貞は早いって証明しちまった。」
久美子はこのどこへ行ってもわらわらと女性を惹きつける極上の男がさっきまで童貞だったことが信じられなかった。
慎は一つになったままで久美子の唇を求めてきた。貪るように久美子の唇をこじ開け舌を絡める。じんじんと身体を無理やりこじ開けられるような痛みが戻ってきて久美子は顔を顰めた。
「若いからな、回復も早いぜ。」慎の指が胸の頂を摘まんで捏ね回すと、慎に触れられているところから熱い痺れが全身に広がっていった。慎の身体が離れかけ、ずんっと奥に突き上げられる度に痛みが違うものに変わっていく。慎は浅く深く貫きながら親指で久美子の一番敏感なところに触れた。久美子の息遣いが荒くなり、慎の背中に腕を回してしがみつく。久美子が咆哮をあげ極みに到達したあと、慎は久美子の最奥に全てを注ぎ込んだ。
意識のない彼女に上掛けを掛けて隣に滑り込み、抱き寄せて慎も眠りについた。
朝の陽ざしの中で久美子はミノルの「お嬢、うくぉ?げっっ。」という声を聞いた気がした。
夜の間、何回慎に抱かれたかわからない。
何回も慎に起こされ久美子は夢うつつのまま彼のものにされていった。若い彼は疲れを知らないようであった。
やがて、はっきりと目覚めた久美子は慎の腕の中から抜けだし、慎を起こさないよう気をつけながら着替えた。今は血迷ってるだけだが、そのうち相応の相手が現れるだろ。ちくりと感じる胸の痛みは無視して久美子は部屋を出た。
食卓を見て久美子は驚いた。赤飯に鯛の尾頭付き?「一体何のお祝いだ。」久美子の言葉にミノルが満面の笑みで「へぇ、お嬢が女にしてもらったお祝いで・・・」険悪になった久美子の顔を見てミノルの顔が青ざめた。
怒りを食べ物に向けるのは間違っている。
矛先は偶然通りかかった工藤が受けることになった。てつが廊下に伸びた工藤にびんたを食らわせ覚醒させるのをぼんやり眺めていた久美子は耳元で「うまそうだな」という慎の声を聞いた。慎はお祖父さんの浴衣をはおってさわやかそのものだった。
「若旦那、召し上がってください。」誰が若旦那だーーー!
久美子はもう自分の手に負えない事態になっていることを感じ始めていた。