575 純真な歌姫 ダイアナ・パーマー

純真な歌姫 (ハーレクイン・プレゼンツスペシャル)

純真な歌姫 (ハーレクイン・プレゼンツスペシャル)

父親が落馬事故で亡くなった後、母エマは隣の牧場主と結婚し、コールはヘザーの義兄となった。13歳のヘザーは美しい少女で、コールは彼女に心を奪われる。天真爛漫なヘザーはコールを崇拝していたが、やがて、彼の反対を押し切って歌手への道を歩み始める。
二年の下積み生活を経て、成功を掴んだヘザーだったが、高揚する気持ちより故郷を恋しく思う気持ちが強いことに虚しさを感じていた。喝采を浴びた劇場からの帰りに、事故に合ったヘザーは、そのショックから声が出なくなり、コールは彼女を牧場に連れ帰った。そして、コールはヘザーが自分を男性として意識し始めたことに気付く。彼が待ち望んでいた変化だった。だが、敬愛する兄に対して不適切な想像をすることに、ヘザーは罪悪感を感じる。彼女を求めるあまりに、自制心を失いそうになるコールは、ヘザーを持て余し、優しくしたり、突き放したりする彼をヘザーは理解できなかった。エマは息子がヘザーを愛していることに気付いていた。二人が結婚してくれれば嬉しい。しかし、エマは医師から余命幾ばくもないことを知らされる。エマはヘザーに助言を与え、その言葉に勇気を得たヘザーは怯えるのを止めて、コールに歩み寄った。二人は親密な時を過ごし、ヘザーはコールを愛していると告げる。しかし、二人の進展を知って、テッサは賭けに出た。デッサはヘザーを追いやるために、コールにヘザーが実の妹であると話した。ヘザーの母親がコールの父親を追いかけ回していたことは、周知の事実だった。母エマなら本当の事を知っているはずだ。だが、母の部屋に行くと、既に息を引き取っていた。ヘザーを妹と認めたくないコールは家政婦に、それとなく尋ねてみるが、家政婦が口を濁して言ったことにテッサの話を信じるしかないと結論づける。
エマの葬儀以来、冷たくなったコールに、ヘザーは不安を感じていた。問いただすヘザーに、コールは、彼女を愛したことも、愛することもないと告げる。傷ついたヘザーは、コールに別れを告げ、華やかな世界に戻って行った。復帰したヘザーを、彼女を思うギルは全面的にバックアップして、彼女はスターとなった。
数カ月が過ぎた頃、コールを弁護士が訪ね、エマから託されたという手紙を持って来る。そこには、ヘザーが妹ではない事実が書かれていた。コールは何としてもヘザーを取り戻そうと決意する。
ヘザーはコールにチャンスを与えようとしなかった。大人になったヘザーは、さらに美しくなっていたが、痩せ細り、やつれていた。そして、高熱で舞台に上がったヘザーは、歌い出す寸前に倒れ、意識を失う。
目覚めた時、ヘザーは牧場にいた。コールは理由は言わずに、愚かな間違いをしたと言い、やり直そうと提案する。しかし深く傷ついていたヘザーは、彼を信じることができなかった。そして、コールはプライドに賭けて、テッサのような女の言葉を信じた愚かさを告白することなどできなかった。
二人の口論は平行線をたどり、ヘザーはコールから離れることを決めるが、それを知らないテッサは新たな楔を打ち込もうと、コールに話した嘘を持ちだす。ヘザーはコールの両親が誰も入り込めない程に愛し合っていたことを知っていた。そして、その嘘を信じたが為にコールが自分を追いやったことに気付く。彼を愛している、彼は自分のものだというテッサの言葉をヘザーは、笑い飛ばした。彼が誰かを愛しているなら、鎖をつけてでも付きまとい、束縛するはずだ。そこで、ヘザーははっとする。彼の私への態度は、全くそんな風だ。ずっとわからなかったコールの気持ちが、やっと理解できた。ヘザーはまっすぐにコールの胸に飛び込んで行き、彼を信頼し愛すると誓った。


海外版紫の上ですね。掌中の珠を守りたい一心で、他の男たちを蹴散らし、思い通りにならない彼女に苛立ち、待ち続けた末に禁断の木の実だと知って地獄に落とされた挙句、自分が仕出かした失敗のツケを支払うはめに陥る男。彼女は混乱し、傷つき、やがて彼の深い愛に気付くという話です。