574 波紋 シャーロット・ラム

波紋 (MIRA文庫)

波紋 (MIRA文庫)

クレアは就寝中に暴漢に襲われ、死の恐怖を味わう。ルーム・メイトの帰宅で救われたクレアは、男性の存在に怯えるようになるが、無言電話がかかり始めてから不安は増すばかりとなった。レイプの被害者であるのに関わらず、クレアは罪悪感に苦しみ、自問自答を繰り返す。
クレアの事件は、夫の浮気以来、夫に償いを求め続け自身の人生を台無しにしたことをクレアの母に気付かせ、クレアの両親はやり直す努力を始める。
そして、クレア自身も、愛されたいために、自分勝手な恋人を許していたことに気付いて交際を止めた。
クレアのボス、ラリーはずっとクレアの傲慢な恋人トムをクレアに相応しくないと苛立たしく思っていたが、事件後、彼女を愛していることに気付く。だが、傷ついた彼女に負担になるような行動は慎むつもりだった。無言電話の逆探知で、犯人は逮捕され、その家からクレアたちの部屋から盗まれた家具が見つかった。だが、犯人が自供しないことにクレアは憂鬱になった。法廷で証言などしたくない。全て忘れたい。ゆるぎない態度で、あれこれと世話を焼くラリーが、実は自分に惹かれていたと知ってクレアは驚いた。そして、自分も彼に好意を感じていることはわかっていたが、まだ早すぎると躊躇する。
ある日、クレアはトムと再会し、クレアの態度を誤解したトムは部屋を訪ねて来る。バスローブだけのクレアが着替えている間に、今度はラリーが訪れ、すっかり寛ぐトムを見て誤解する。クレアはトムを追い出し、ラリーに弁解しようとするが、それからラリーはクレアを避け始めた。話を聞こうともしないラリーを腹立たしく思いながら、クレアはラリーを愛していることに気付く。怒りにかられて、クレアはラリーを訪ね、一気にトムとの顛末を話した。ラリーはクレアを抱きしめ、嫉妬のせいで彼女を無視することしかできなかったと言った。二人は恋人同士となり、ラリーはクレアを自分の女と呼んだが、所有欲を露わにした言葉に、クレアはゆっくりやって行きたいと告げる。ラリーは急かしたりしないと約束した。


レイプ事件がきっかけになり、彼女の周囲の人たちの生き様に影響を及ぼすこととなる。その波紋は広がり、やがて返って来る。彼女もまた、自分を見つめ直し、前に進む糧とするという話。結構深い話です。