563 あの夜に戻れたら トリッシュ・モーリ

あの夜に戻れたら (ハーレクイン・ロマンス)

あの夜に戻れたら (ハーレクイン・ロマンス)

兄の親友であるヤニスに恋するマリエッタは、彼の誕生日に自分を与えることを決め、ヤニスの寝室に忍び込む。
ヤニスは事業を救うために、有力者の娘と結婚するよう父に言い渡されて荒れていた。しこたま酔い、夢うつつで傍らの女性の愛撫に応えたヤニスは、彼女の中に入ろうとした時になって、それがマリエッタであることに気付く。他の女性と結婚することが決まっている男が、彼女の純潔を奪っていいはずがない。意思の力を総動員して、ヤニスはマリエッタを拒絶して部屋から追い出した。しかし、翌朝父に呼び出されたヤニスは、不実を働いた疑いを責められ、潔白を証明するよう促される。ヤニスは否定することもできたが、あえて肯定し、縁談は破談となる。そして、破談になったことで、ヤニスの父は会社を失い、倒れた。それからヤニスは失った富を取り戻すために、寝る間も惜しんで働いたが、その原動力はマリエッタへの憎しみだった。
13年後、レイフの結婚式で二人は再会する。
愚かな16歳の頃の過ちを恥じて、マリエッタは緊張するが、ヤニスの憎悪に戸惑う。美しく成長したマリエッタを前に、ヤニスは自身の欲望に怒りを感じ、それならば13年前に貰うはずだったものを味わう権利はあると結論づける。自分を憎む相手に身を捧げるなんて愚か以外の何物でもない。だが、マリエッタはヤニスが欲しかった。切羽詰まった彼女はヤニスに13年前に自分を拒んだ理由を尋ね、彼が自分を経験者だと思っていることを知る。いまだに処女であることを知られたくない。彼の誘惑を拒んで、二度と遭わないことを誓ったマリエッタに、さらなる問題が持ち上がる。皇室に脅迫状が送りつけられ、危機感を覚えたレイフは妹の警護に、自分が一番信頼する人物、ヤニスにマリエッタの保護を頼んだのだ。常に行動を共にする間、ヤニスは自分が思いこもうとしていたマリエッタの姿が、実態とは違うことに気付く。彼女は甘やかされたお嬢様でも、傲慢でもない。それでも、怒りに囚われたヤニスは、自分の想いを聞こうとしなかった。
やがて、脅迫者が判明し、ヤニスがマリエッタの傍を離れた後で、ヤニスの父がまた倒れる。病室で父はヤニスに感謝と自身の過ちについての謝罪を口にする。死を前にした父の言葉に、ヤニスはやっと真実に気付く。自分は自分で判断したことから起こった災厄を全てマリエッタの罪にし、彼女にいわれなき非難を浴びせていたのだ。
父の葬儀が終わった数日後、ヤニスはマリエッタに会いに行き、許しを乞い、チャンスを願った。信じるに足る証はと尋ねるマリエッタに、ヤニスは愛を告白する。


紆余曲折の後で、初恋を成就させる話。愛も憎しみも、強い感情という点では同じというHQ的な説でございますわ。