555 くちづけは眠りの中で リンダ・ハワード

くちづけは眠りの中で (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

くちづけは眠りの中で (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

射撃の腕を買われてCIAの仕事を始めた時、リリーは18歳だった。彼女は優秀な暗殺者だったが、危険を恐れて家族と疎遠になり、やがて心が蝕まれて行く。仕事で赴いた先で、死にかけた赤ん坊を拾ったリリーは、育てることを決めるが、留守がちの彼女には並大抵ではなかった。信頼する元同僚夫婦にジーナを託した後も、娘を愛する母の心のままだった。引退したはずのその夫婦が、何かの仕事を引き受け、殺された事を知ったリリーは復讐を誓う。ジーナまでも手にかけた犯人を許すことはできない。
サルヴァトーレは政府に情報を提供することで、自分の犯罪に目をつぶらせてきた。彼の利用価値を考えれば、政府が何もしないことは理解できた。リリーはこれまで貯めてきた資金のほとんどを使って猛毒を手に入れ、サルヴァトーレに近づく手段を模索した。リリーの仕掛けた罠にサルヴァトーレは喰いつき、幾度となくデートに誘うようになる。希少価値で有名なワインに毒を仕込み、デートに使うレストランに配達させたリリーは、サルヴァトーレがその毒を飲み込むのを待ったが、彼は執拗にリリーにも飲むよう勧め、彼女が拒むと激怒する。リリーは彼の気の済むよう、ワインを口に含むしかなかった。飲み込みはしなかったものの、唇に触れた毒は確実に彼女の体内に染み込んで行った。
翌日、父サルヴァトーレが死んだことからリリーのフラットにやってきたロドリコは、死にかけているリリーを見つける。ロドリコはリリーが起き上がれるようになると、監視をつけてフラットに帰し、リリーはその好機に姿をくらました。ロドリコは父を殺した犯人が彼女であったことを知り、彼女がCIAのエージェントであったことを調べ出す。CIAは彼女を捕えようとエージェントを派遣したらしいが、制裁は自分の手でとロドリコは誓った。
スウェインは空港の防犯ビデオからリリーが一旦イギリスに行き、すぐフランスに戻ったことを知るが、その後の彼女を見失う。考えた末、リリーの親友夫婦が爆破した施設に行ってみると、彼女がいた。ロドリコの手先に見つかり銃撃を受けるリリーを助け出したスウェインは、殺された夫婦に仕事を依頼した人物と内容に興味を持った。突然現れた救世主にリリーは戸惑う。彼女は一人でやることに限界を感じ、スウェインを信頼することを決める。やがて、二人は愛し合うようになり、スウェインは彼女を騙していることに悩んだ。爆破を依頼した人物から、いきなり電話を貰ったリリーは罠を疑うが、それに乗ることを決める。警備会社を装い、施設を爆破し、研究者を暗殺する。二人は計画通り任務を遂行し、そのままギリシアに飛んだ。部屋にこもって愛し合う日々の後、リリーは身体の痺れを感じ、スウェインを見つめた。彼はCIAの手の者だったのだ。薄れる意識の中でリリーは死を予感し、彼にキスをねだった。


18歳から悪者とはいえ、殺しを繰り返して来た自分には、もう日の光は似合わない。そして、復讐を誓った時、彼女は自分の死を覚悟する。それでも、生き延びられたら、追われる生活から逃れる手段が見つかるかも。19年、殺し屋として不動の成績を残しながらも、彼女は壊れかけていた。彼は彼女を笑わせ、苦しみから解放させるが、真実を話すことはできないでいた。
感染力のあるウィルスを作りだし、ワクチンを生成してからウィルスをばら蒔く。そのワクチンで荒稼ぎしようと企む組織を壊滅させようと引退した夫婦を現場に戻したのは意外な人物だった。ホットで、すごく面白いです。