549 別れの日まで愛して メラニー・ミルバーン

別れの日まで愛して (ハーレクイン・ロマンス)

別れの日まで愛して (ハーレクイン・ロマンス)

バレンチノは最愛の妻を亡くして、心を閉ざしてしまう。そして、息子ジョバンニが兄ラファエルの投げたボールで命を落とした時、父としての義務を果たすこともできなかった。愛する母を亡くし、心の拠り所だった弟の死の原因を作ってしまったことと、言葉ではない父の非難を感じて、ラファエルは深く傷ついた。家を出て行ったラファエルは、二度と姿を見せなかった。頑なな老人になったバレンチノは、雇った付き添い看護婦エマの優しさに触れ、死期を悟って初めて、これまでの間違いを正そうと決意する。
バレンチノを看取った後で、弁護士に呼ばれたエマは、彼の遺言に驚愕した。一年間ラファエルと結婚すれば、莫大な財産を相続できると言う。エマは愛以外の理由で結婚する気は全くなかった。その上、やって来たラファエルは、エマがバレンチノの愛人として財産を手に入れたと罵った。だが、荷物をまとめて出て行くと言うエマを、ラファエルは引き留め、何としても結婚はすると告げる。エマは悩んだ。麻薬中毒者だった両親の暴力からエマを守ってくれた姉シモーンの経済的な心配が、そのお金があれば僅かでも解決される。悪質な取り立てで、シモーンとその娘が苦しんでいると知って、エマは決意した。ラファエルの魅力にときめいても、これはただの便宜結婚に過ぎないのだから。
ラファエルは、エマを父の愛人だと固く信じていたが、彼女の抗えない魅力に気付いていた。彼女が欲しいという欲望は、日増しに膨れ上がり、ラファエルはこの期間を楽しんでも構わないのではと思い始める。短い会話からラファエルの心の痛みを知ったエマは、やがて恋に落ちたことを知り、彼を受け入れる。しかし、彼女がバージンだったと知ったラファエルは、ひどい罪悪感を感じ、彼女を遠ざけた。
内容も告げずに留守にするラファエルに、エマは激怒して、ラファエルが恋人を作るなら自分も同じことをすると言い、嫉妬にかられたラファエルは、エマの唯一許される恋人は自分だと宣言する。だが、エマの愛の言葉に、ラファエルは応えなかった。愛なんて幻想だ。そんな不確かなものは当てにならない。それに、そんなものは欲しくない。
ラファエルは子供などいらないと言及し、避妊には気をつけていたが、エマはピルを服用していなかった。妊娠を知った時、ラファエルはエマの意図を疑い、責めるが、エマの後悔の言葉に、また罪悪感を感じる。彼女をこんな目にあわせていい訳がない。そして、その時初めて、彼女なしには生きられないことに気付かされる。愛している。しかし、そう告げてもエマは信じなかった。
翌日、エマは一人の女性に声をかけられた。バレンチノの元愛人ソンドラだった。ソンドラは、エマがラファエルとの結婚を止めてくれれば、ラファエルよりも多くの報酬を渡すと提案し、エマが断ると手紙を置いて去って行った。バレンチノが息子に宛てた和解の手紙だった。エマはソンドラの悪意に憤慨する。
手紙を読んだラファエルは、既に父を許していたと言った。エマの存在が、これまでの生き方を見直す機会を与え、頑固な父子の愛を確認させてくれた。そして、ラファエルは、エマにハネムーンに行こうと提案した。


愛する妻を失った時、彼は苦しみに没頭するあまりに、息子さえも失った。エマを信頼した彼は、息子に愛と家庭を与える存在として、彼女に希望を託し亡くなる。苦悩の末、息子はそれを受け取った。