530 深紅の誘惑 ジュリー・コーエン

深紅の誘惑 (ハーレクイン・アフロディーテ)

深紅の誘惑 (ハーレクイン・アフロディーテ)

ジャックはキティの想いが辛かった。彼にはまだ一人の女性に縛られる覚悟ができていなかったのだ。全校生徒の前で、キティを傷つけてしまったことを、ジャックは悔やんだが、許しを乞う時間をキティに与えてもらえることは叶わず、二人は別々の道に進んだ。
インテリアデザイナーとして成功したキティは、結婚したが、完璧なのは上辺だけだった。夫は別れた妻と縁りを戻すことを決め、キティから去って行った。故郷で出直そう。だが、資金は減って行き、仕事はなかった。このままでは車さえ売らなくてはいけなくなる。都会で雇われる身分に戻るのは時間の問題なのかも。悲観的になりかけたキティに映画館の改装の依頼が舞い込み、彼女はこの仕事が欲しいと願った。
ジャックは幸運な男だった。今まで、困った事態に直面したことはない。仕事は順調だし、交際も楽しんでいる。だが、ある日ジャックは夢で運命の女性と出会う。その鮮烈な体験は、彼を禁欲へと向かわせた。その女性を見つけ出す。キティの声を聞いた時、ジャックは彼女こそ夢の女性だと気付くが、彼女はジャックを憎む唯一の女性だった。ジャックは自分が以前の軽薄な男ではないことを証明しようとするが、キティは仕事以上の関係は望んでいないと突っぱねた。しかし、キティはいまだジャックを愛していることに気付いていた。彼が求めているのは情事だけだ。ふとしたはずみで、映画館に閉じ込められた二人は、この中にいる間だけ関係を持つことに同意する。ジャックは携帯に気付くが、関係が終わることを恐れて隠してしまう。しかし、キティが崩れた床に落ちて怪我を負ったことで、嘘がばれた。キティの信頼を得ることが、とても難しいことはわかっていた。
ジャックは映画館の看板に、彼女への愛の言葉を掲げ、自分が求め、愛しているのは彼女一人であることを明らかにした。キティの不信感は消え、ずっと彼を愛していたことを告げた。


不思議な力を持っていた祖母から、その力を受け継いだと推察したジャックは、夢の女性が実在すると信じてほぼ一年禁欲生活を送る。だが、見つけた彼女は昔ひどく傷つけてしまった女性だった。