506 ひそやかな微笑み ヘザー・グレアム

ひそやかな微笑み (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

ひそやかな微笑み (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

往年の大女優の娘としての重圧から反抗的な思春期を過ごしたジェニファーは、やがて、母の愛を受け入れ、女優への道を進み始める。しかし、母の隠し続けてきた病気に気付いてから、仕事と看病に忙殺されたジェニファーに私生活はなくなった。アビーにとって、ジェニファーは一人娘だったが、義理の息子がいた。ある日、脅迫状が届いたと、アビーはジェニファーの身を心配し始め、ジェニファーを守るためにコナーを呼び寄せる事を決める。コナーは自分の人生を軌道修正してくれたアビーに感謝し、彼女を敬愛していたが、妻が殺されたハリウッドを憎んでいた。だが、アビーの頼みは断れない。表向きは、ジェニファーの出演するドラマに加わるという名目で戻って来たコナーは、犬猿の仲だったジェニファーの警護をすることに懸念を感じていた。ジェニファーに感じる欲望と、彼女に嫌われているという事実。しかし、コナーが戻った日、女優の死体が見つかった。そして、死体はアビーの家の敷地内から捨てられたことがわかる。その数日後、ジェニファーとコナーは、ゴミ捨て場に捨てられた死体を見つけ、またしても女優が殺されたことを知る。ヒッチコックの作品に模して殺されている。アビーの心配は、妄想ではないかという疑惑は消えて行く。アビーの家に暮らすジェニファーとコナーは、何者かの視線を度々感じたが、侵入者は見つからなかった。屋敷は、前の持ち主の秘密を抱え、隠し階段や隠し扉があると言われていた。そして、数人の犠牲者を出してもいたが、詳細ははっきりしていなかった。夜中に犬の声に促されたジェニファーは、クローゼットから洗濯室に落下し、映画監督ヒューに遭遇する。ヒューは逮捕され、彼の自宅から殺された女優の血がついたシーツが見つかり、事件は解決されたかに見えた。その夜、アビーの親友ドルーは、盛られた薬に朦朧となりながら、すぐ目の前にあった事実に思い当たり、ジェニファーに警告する必要を感じる。だが、遅かった。コナーは外に誘いだされ、周囲の人間は薬を与えられて意識を失くし、ジェニファーは一人、犯人と共に屋敷に取り残されていた。サイコのシャワーシーン、犯人はジェニファーに、それを求めた。コナーは、おびき出されたことで、犯人の正体に気付いた。そして、犯人がナイフと持ちかえるために置いた銃で、彼を撃ち抜いた。彼は俳優グレンジャーの遺児だと言ったが、母親は多数の男と関係を結んでおり、グレンジャーは認知せず、彼女を金で追い払った。父だと思われる男に対する憎しみで、犯人は常軌を逸していたのだ。アビーが買い取ったグレンジャー館を相続できなかった恨み。やりたかった仕事を選ぶことができなかった悔しさ。様々なことが彼を殺しへと駆り立てたのだ。だが、それは彼の死によって終わりを告げた。


疑わしい人物が、沢山出てきます。ジェニファーに忍びよる危険は、何のためのものなのか。女優たちは、どうして殺される運命に晒されてしまったのか。そして、惹かれあうジェニファーとコナー。とっても面白い内容です。