503 憎めども恋しくて ケイト・ウォーカー

憎めども恋しくて (ハーレクイン・ロマンス)

憎めども恋しくて (ハーレクイン・ロマンス)

アラナはラウルを愛していた。しかし、彼と婚約した後で、彼と彼の父親の話を聞き、彼が自分を愛していた訳ではなかったことを知り、婚約を解消した。彼は後継ぎを産むに相応しい女が欲しかっただけだったのだ。失意の中、イギリスに戻ったアラナは、ラウルの妹ロレーナとの友情は保ち続け、ロレーナはアラナの兄クリスと恋に落ちた。だが、ラウルの元を去って二年後、ロレーナとクリスの乗った車は事故に巻き込まれ、二人は命を落とす。アラナはラウルとの再会を恐れていたが、自分の口から事故の顛末を知らせなくてはいけないと思っていた。二人の間の情熱は醒めてはいなかった。二年前、あれほど初夜に無垢な花嫁を迎えることに拘っていたラウルは、情熱に負けて彼女を抱き、彼女が処女であったことを知る。そして、落胆するお互いの親たちのために、自分たちが結婚し子供を設けることは癒しになると告げた。アラナはラウルの愛が欲しかった。だが、彼が与えられるのがそれだけなら、甘んじて受けるしかない。アラナはもう一度彼に背を向ける勇気はなかった。
イタリアのラウルの屋敷に来てから4カ月が過ぎても、アラナに妊娠の兆候は現れなかった。アラナは苦々しく考えていた。結婚する気配がないのは、妊娠しないせいだ。妊娠して初めて、彼は私の指に指輪をはめるつもりなのだ。今の私は、ただの愛人に過ぎない。
ラウルはアラナを手に入れて満足していた。父が催促しなければ、子供も自然に任せてもいい。だが、出会った頃の屈託のないアラナは消え、謎めいた女性がそこにいた。問いただされて、アラナはこの関係はいつ終わるのかと、ラウルに聞いた。激怒したラウルは、当初の計画も忘れて、二週間後に結婚式を挙げると答えた。
式前日になって、アラナはまたしても妊娠に失敗したことに気付いた。愛されている訳でもなく、子供ができる見込みもない。こんな気持ちで誓いの言葉が言えるとは思えない。深夜、アラナは庭を彷徨い、思い悩んでいた。
アラナが問題を抱えていることは、ラウルにもわかった。ラウルは本当の気持ちを隠していた。追って来たラウルの言葉に、アラナは希望を感じ、ラウルに話すよう促し、真実を知る。彼は私を愛していたのだ。愛し合っているなら、結婚を避ける必要などない。


真実を告げなかったせいで、愛する女性を失い、彼女を憎もうとした男は、それでも彼女を求めることを止められなかった。だが、彼女の欲望を利用して、共に眠る権利を手に入れたものの、足りない物に気付く。プライドに邪魔されて、中々本心は言えない男の話。