352 見知らぬ夫 リサ・ジャクソン

見知らぬ夫 (MIRA文庫)

見知らぬ夫 (MIRA文庫)

政治家クラウリーの汚職を暴くために、サルバヘ島を訪れたニキは、何者かに追いつめられ崖から転落する。病院で目覚めたニキは、それまでの記憶を失い、傍らには彼女の夫と名乗る男が付き添っていた。トレントと名乗る男に見覚えは全くなかったが、自分が衝動的に結婚する人間ではないと疑い、彼に不信感を覚える。退院後、記憶を探るため、事故現場に出かけたニキは、追って来たトレントに怒りを感じたが、二人の欲望が高まり、その廃屋で一線を越えてしまう。日が経つにつれて、ニキの記憶は少しづつ戻ってきたが、欲しい記憶には届かなかった。やっと、帰途についた二人は、トレントが質問に答えることを条件にトレントの家に落ち着く。そして、トレントは結婚していないと告げた。激怒したニキは、説明も聞かず自宅に帰ったが、トレントはついて来てしまう。
トレントは私立探偵として、クラウリーを追っていたが、新聞記者のニキがクラウリーを探っていることを知って、彼女に興味を持ち、彼女の経歴を調べあげていた。トレントはニキに出会った時から、彼女に惹かれていた。そして、彼女が命を狙われていることに気付き、彼女を守るため夫と嘘をついたのだった。トレントはクラウリーの件が片付くまで、結婚していることにしようと提案する。ニキは、彼を愛してしまったことに気付き、愕然とするが、彼の意見に渋々従った。やがて、記憶が全て戻り、それまでこつこつ集めた記事の中にトレントの写真を見つけて裏切られていたことを知った。トレントはクラウリーに雇われていた人間だったのだ。トレントはクラウリーの悪事を知って解雇されたと言ったが、それまで黙っていたトレントをニキは許せなかった。数日後、ニキはトレントと決着をつけるため、彼の家を訪れたが、家には誰も居らず、やって来たのはクラウリーとニキを崖から突き落とした男だった。ニキは森に逃げ込むが、男は追いつき銃を向けた。ニキを助けたのは、やはりトレントだった。トレントはニキを愛していると言ったが、ニキには信じられなかった。男は捕まった後で、クラウリーにニキの殺害を依頼されたことを暴露し、ニキはスクープをものにした。社で称賛されてもニキは虚しかった。彼女は会社を辞め、トレントの家に向かった。愛を告白し、結婚して欲しいと言ってサルバヘ島への二人分の航空券を見せても、トレントは何の反応も見せなかった。落胆したニキは、何か言うことはないのかと、彼に尋ねた。どうしてこんなに時間がかかったんだと彼は言った。トレントはニキが戻って来ることを確信していたのだ。激怒したニキが、彼を罵ろうとすると、トレントは言葉を唇で塞ぎ、結婚してくれと言った。


一目惚れしちゃった女を守るために、無謀な嘘を紡ぎ出した男は、自身の嘘に追いつめられていく。面白かったです。