349 アメジストの瞳 エリザベス・ローウェル

アメジストの瞳 (ハーレクイン文庫)

アメジストの瞳 (ハーレクイン文庫)

辺境の未開地で生まれ育ったリサは、自分がよそ者であることを感じていた。植物学者の両親は、適齢期になったリサを自国に送り、アメリカで相応しい相手を見つけられるよう配慮する。しかし、リサはなかなか文明に馴染めず、リサを預かった教授は一夏の植物の観察をリサに命じた。草原ではリサは不都合なく暮らすことができた。
ライは父親から結婚して後継ぎを作ることを言われ続けて辟易していた。父は自分が見つけてきた女性を次々と彼の前に送ってきたが、財産目当ての女性に騙されることなど御免だった。
草原はライの命の洗濯場所だった。そこで初めてリサに出会った時、ライは父の贈り込んできた相手だと誤解し、彼女に欲望を覚え、ゲームを口にする。リサはライを草原の持ち主の牧場主だと知らず、見た途端に自分は彼のものだと確信した。一介のカウボーイとしての自分にリサが惹かれていることを知って、ライは高揚を感じる。財産や肩書のない一人の男として認められたことは、ライにとって初めての経験だった。大学に問い合わせをし、リサが結婚相手を探していることを聞いたライは、素情を隠して一夏をリサと過ごすことを決めた。リサは初めての恋に戸惑っていたが、彼の来訪を心待ちにする自分がいた。ライはリサが欲しかったが、身分を隠したまま彼女の純潔を奪うことはできないと思っていた。リサはキスさえしたことがなかったが、彼を求めていた。リサは一途にライに焦がれ、やがてライの自制心は敗北する。牧場で開かれるダンスパーティーにライと行きたい。リサは貧しいカウボーイのために、晴着を作るよう両親から贈られた上等な麻布でシャツを作った。シャツを持って、牧場を訪れたリサは、彼の正体を知って愕然となった。そして、カウボーイの漏らした言葉から、ただの遊びであったことを知った。自分はここアメリカでも、よそ者でしかない。夏は終わろうとしていた。リサは夜中にやって来たライを歓迎し、二人は情熱的な一夜を過ごした。早朝、リサは小屋にライを残し、旅立った。目覚めたライは、リサが去ってしまったことを信じられなかった。小屋は整理され、荷物は何もなくなっていた。しかし、一つだけ、あの日ライへのプレゼントだとリサが持って来た紙袋が残されていた。シャツを見て、ライは涙を流した。自分を守ることだけに夢中で何も見えていなかった。分かれ道でリサは立ち往生していた。牧場への道しか知らない馬は、違う道へ進むことを拒んでいた。追いついたライは、季節も場所も関係なくリサを愛していると抱きしめた。


素敵な話ですが、有り得ないよー!