341 美しい悲劇 リンダ・ハワード

美しい悲劇 (MIRA文庫)

美しい悲劇 (MIRA文庫)

ルールにはティーンエイジャーの頃から女性が群がっていた。人生を楽しんでいたルールは19歳の時、徴兵を受けベトナムに行った。帰って来た時、彼は変貌していた。荒れるルールを父親は勘当し、女性問題と暴力沙汰が絶えない中、ルールは飲んだくれていた。ある日、キャサリンの父ウォードは、手負いの獣のようなルールを自分の牧場に連れ帰った。痩せ細り、傷を負ったルールは懸命に馬に乗り、牛を追い、頭角を現していく。ルールが牧場長に任命された時、異論を唱える者はいなかった。しかし、ウォードが急死した後、ルールは勝手に母屋に引っ越し、全ての運営に関わるようになっていく。牧場をルールに乗っ取られたようで、キャサリンは反発を覚えた。ルールは誰に対しても威圧的だった。17歳の夏、裸で泳ぐキャサリンは、ルールに頭ごなしに叱られて、激怒し、彼に掴みかかったが、それは情熱へと変わってしまう。自分の激しい気持ちに怖気づいて、キャサリンは進学を決め、牧場から出て行った。数年後、キャサリンは穏やかなデヴィッドと結婚したが、ルールを忘れることはできなかった。しかし、子供も作らぬまま、デヴィッドは病死し、25歳になったキャサリンは規定通り牧場のオーナーとなった。短い休暇を牧場で過ごそうと、キャサリンは思い立ち、久しぶりに故郷の土を踏んだ。迎えに来たルールは、いきなり彼女にキスをし、ずっと牧場に滞在するようにと言った。どんなに意思を強く持とうとしても、身体には裏切られる。キャサリンには自分の破滅が見えるようだった。牧場は完璧に運営され、素晴らしかったが、オーナーの自分に何の相談もなかったことにキャサリンは憤慨した。そして、ルールは当然のように、深夜キャサリンの部屋にやって来た。彼に抗えない自分をキャサリンは嫌悪した。ルールは結婚を口にしたが、本心は見せなかった。牧場を手に入れるための駒に使われたくはなかった。キャサリンはルールを愛していたから、ルールが他の女性に目を向けた時、生きていられるとは思えなかった。キャサリンは牧場を売り払い、フラットに帰ることを考えた。危険なルールから離れて、一人で考える時間が必要だった。しかし、キャサリンが荷造りを終えた時、ルールは大怪我を負った。キャサリンは病院に付き添ったが、ルールは片時もキャサリンを放そうとしなかった。キャサリンはルールの世話と牧場の運営を一人で抱え込んだ。くたくたに疲れながら、キャサリンは彼と牧場からは逃れられないことを知った。もはや牧場を売ることなど考えられなかったが、訪れたディーラーから、ルールが牧場を売ることに協力的だったことを聞いて驚愕する。ルールに問いただそうと部屋のドアを開けた時に、キャサリンが見たのは信じられない光景だった。肌を露わにした義姉リッキーがルールに跨り、彼にキスしていた。キャサリンは激怒し、リッキーを引き離した。襟首を掴み、廊下をリッキーの部屋まで引きずっていった後で、キャサリンは彼女にこの家から出て行くように命令した。彼のベッドに他の女が入るのは許せない。彼の本心はどうでもいいから、彼を既婚者にしてしまおう。決意したキャサリンは、再びルールの部屋のドアを開けたが、ルールはギブスのはまった足を必死でジーンズに突っ込もうと格闘していた。キャサリンをどこにも行かさないとルールは言った。彼女の傍でなければ、生きていられないと。愛しているとは言わなかったが、言ったも同然だった。どこにも行かない、結婚するとキャサリンが言うと、ルールはなぜだと聞いた。愛しているからとキャサリンは答えた。ルールは、ずっと待ち焦がれていた彼女がやっと帰って来たことを知った。


リンダさまの初期作品だそうです。彼の影響力の強さに怯えて、立ち去った彼女を、二人の絆を信じて待ち続けた男の話。さっさと愛を告白してれば、問題なかったのに、傲慢な男の常ですね。本当に求めるものは口にできないの。