337 記憶のなかの愛 スーザン・メイアー

記憶のなかの愛 (ハーレクイン・イマージュ)

記憶のなかの愛 (ハーレクイン・イマージュ)

グレースとニックはハイスクールを卒業してから結婚した。直後、グレースの父が入院し、翌日ニックは「若すぎた、離婚の手続きは自分がする」という書置きを残し、姿を消した。置き去りにされたグレースは誰にも結婚したことは話さず、10年が過ぎた。仕事のパートナーに惹かれ始めたグレースは、彼とデートする前に離婚していることを確かめたが、手続きがされていなかったことに気付く。決着をつけるため、グレースはニックの居所を調べて、結婚許可証を持って出かけた。しかし、グレースは嵐に巻き込まれ、事故を起こし記憶を失ってしまう。
ニックはグレースと結婚し、素晴らしい一夜を過ごしたあとで、悲惨な事実を知った。働きもせず、酒を飲んでは母に暴力を振るう父は、グレースの家が裕福なことを知っていた。父親に結婚を知られたら、グレースをこの悲惨な生活に引き入れてしまうことになる。ニックは一人で旅立ち、働きながら学位を取り、仕事で成功を掴む。しかし、大金を手にしても離婚することは先延ばしにしていた。警察から電話があった時、夫として呼ばれたことを訝しく思っていたニックだったが、記憶喪失と聞いて動揺する。しかし、牧場に電話をかけたニックは彼女の父と兄が2週間の間出かけてしまっていることを知り、グレースを保護できるのは自分しかいないことに気付いた。10年ぶりに見るグレースは美しく、ニックは彼女への愛が全く衰えていないことに気付かされる。だが、自分にその権利はない。数日経ってもグレースの記憶は戻らなかった。見覚えのない夫っだたが、グレースは彼を見た時、彼を愛していたことを確信し、二人の間の絆を感じた。しかし、おやすみのキスもしようとしないニックに、グレースは結婚生活が破綻しかけていたことを推察し、彼を取り戻そうと決意する。ニックもまた、グレースが結婚許可証を持ってやって来た事実を、離婚するために来たのだと想像していた。グレースに手を触れてはいけないというニックの決意は、グレースの愛の言葉にもろく崩れ去った。ニックは10年前に、グレースに話せなかった自身の家庭の悲惨な状況を彼女に話すことができて、解放された気分になった。グレースは全てを許して、自分を受け入れてくれるかもしれない。情熱を解き放ち、寄り添って眠った早朝、二人はけたたましいクラクションで目覚めた。窓の下に佇む父と兄を見た途端に、怒涛のようにグレースの記憶が戻ってきた。結婚した翌日捨てられたことを思い出したグレースは、自分を騙したとニックを責め、引き止めようともしないニックに落胆した。牧場に帰ったグレースは弁護士に離婚手続きを依頼し、数日後ニックがサインした書類を送り返してきたことを知らされた。グレースはニックが自分にしてくれたことを思い出し、悲しくなった。私は彼をずっと愛し続けるだろう。でも、彼はそれを信じてないし、私を必要だとも思っていない。グレースは前に進むことを決め、アパートに帰ろうと思った。牧場でみんなに憐れまれるのは沢山だ。グレースは荷物をまとめて、最後にもう一度牧場を眺めに行った。柵に足をかけ、佇むグレースの後ろから声がした。ニックだった。彼は両手を出し、グレースにどちらかを選べと言った。片方には離婚届けが、もう片方の掌には指輪が乗っていた。グレースはこれまでの自分の苦しみや苛立ちを思ったが、彼の味わった辛い年月も知っていた。彼女は迷わず指輪を取った。彼は私を愛しているのだ。


両親に対する不信が、結婚への絶望につながり、彼は最愛の女性から離れる。若かった彼には、恥ずべき事情を彼女に話す勇気がなかった。父親が亡くなった時、もっと勇気があれば、早く彼女を幸せにできたのにね。