310 美しい標的 リンダ・ハワード

美しい標的 (MIRA文庫)

美しい標的 (MIRA文庫)

華やかな母と姉にコンプレックスを抱えたまま大人になったクレアは、結婚して妊娠するが、夫と子供を同時に失う。上流階級に馴染もうと必死になるあまりに、夫が別の女性に目を止めたことに、クレアは諦めを感じる。しかし、流産は彼女を打ちのめし、社交生活から遠ざけた。
マックスは企業買収の内偵を依頼される。標的は社長秘書だった。魅力的な外見を武器にマックスはクレアに近づいた。しかし、クレアの反応にマックスは驚く。マックスは戦術を変え、土地勘がないことを理由に、友人になって欲しいと頼んだ。大して美人とも思えないその女性に、どうしてこんなにそそられるのかマックスはわからなかったが、仕事は早々に片づけてクレアとの個人的な関係を深めようと決心した。穏やかなマックスの態度に、クレアは少しづつ警戒心を解いて行った。やがて、酔いが回って口が軽くなったクレアは、マックスが欲しかった情報を話してしまう。自制心が崩れ、愛し合った後で、マックスは彼女に真実を話すつもりだったが、突然の電話で呼び戻されてしまう。買収が確実となり、対応に追われたクレアは、買収先の首脳陣の写真にマックスの顔を見つけ、自分が会社を裏切ったことを知った。蒼白になったクレアに気付いたボスは、クレアの話を聞いても落ち着いていた。そして、退職するというクレアを引きとめた。逃げずに戦おう。クレアの決心も、会社に乗り込んできたマックスの姿に揺らいだ。マックスは自分の口から事情を説明しようとしたが、クレアは耳を貸さなかった。クレアを説得する時間が欲しい。買収によって、社長秘書というポストが必要なくなることに気付いたマックスは、本社に彼女のポストを用意した。
クレアはマックスを愛していた。しかし、同じように魅力的な二人の男性に騙されたことで、彼女は自分を守ろうとしていた。仕事は必要だが、マックスの傍にはいたくない。マックスはクレアに関しては、何もかもが自分の思い通りに行かないことに焦燥感を感じた。
クレアは考えた末、本社に行く決意を固めた。マックスは無視すればいい。家族総出の引っ越しにマックスは現れ、当然のごとく、家族が帰るのを見送った。クレアはマックスが何を求めているのかわからなかった。しかし、マックスは買収によってこじれてしまった関係を修復したいと言った。どんなに拒もうとしても、マックスはそれを許さない。クレアの防御は失われた。マックスはクレアに隙を与えずに、ベットに連れて行った。マックスはクレアに自分の子供を産んで欲しいと言った。クレアが承諾すると、マックスは結婚しようと言った。プライドのために断るなんて馬鹿げている。しかし、クレアの劣等感は根強かった。彼が資産家であることには気付いていたが、イギリスに着いて彼が伯爵家の一員であることを知ってクレアは動揺した。前の結婚のように、マックスがいずれ苛立たしい思いをし、彼女を疎ましく感じるように、きっとなるのだ。結婚式の前日、ようやく決意を固めたクレアは、マックスに自分は彼に相応しくないと告げた。愛しているから、不幸にするようなまねはできないと。マックスは激怒し、逃げるクレアを肩に担ぎあげ車に押し込んだ。ひなびたホテルに連れ込まれたクレアは、衣服をはぎ取られ、二人は裸で向き合った。結婚したくなければ、しなくてもいいとマックスは言った。だが、彼女を手放すことはない、一度信頼を裏切ったせいで二度と信頼されなくても、ありのままの彼女が欲しいのだと。そして、愛していると言った。やっと、クレアの悩みは解決した。


このヒロインの心情、痛いほどわかりました。私、このタイプの人間ですわ。だけど、わかりにくい人に対する対応って、大抵はほっとくって感じですよね。もっとも、本人もほっとかれて、ホッとしてるトコあるけど。