302 バラのざわめき リンダ・ハワード

バラのざわめき (MIRA文庫)

バラのざわめき (MIRA文庫)

孤児として育ったジェンカは、ロバートに引き取られた。孤独だった二人は、お互いを必要とした。ロバートはジェンカに保護と生き抜く術を教えたが、自分の死後、ジェンカが全ての権利を逃さないよう結婚を考えた。70を越した老人と18歳の娘の結婚はゴシップを飾り、ジェンカは非難と中傷に耐えた。しかし、ロバートが亡くなると、ジェンカは黒い未亡人と名付けられ、人々の見る目は変わらないことをジェンカに知らしめた。彼女は一人で戦い、こじんまりとした住まいでひっそりと暮らしていた。ロバートの教え通り、ジェンカは自分の直感を信じ株主としての務めを全うしていたが、顧問弁護士はニコラスに逆らうことは危険だと言った。ニコラスからの呼び出しに出向いたジェンカは、軽蔑に満ちた彼の言葉に反発し、株を売却するつもりはないと、拒絶するが、ニコラスは彼女への欲望を隠そうともしなかった。弁護士の言葉を思い出したジェンカは、売却に同意するから近づかないようにと言ったが、ニコラスは彼女を愛人にするまで滞在を延ばすと言った。ニコラスを避けることはできなかった。ニコラスはどこに行くにもジェンカを伴い、彼女にキスし、触れた。やがて、ジェンカはニコラスを愛してしまったことに気付き、彼に抱かれることを決めた。しかし、妻になりたいというジェンカの言葉は、彼の嘲笑によって打ち崩された。純潔と愛を捧げようとしていた相手から信頼を得ることはできないのだ。ジェンカは身を隠し、傷口をなめ癒そうとしたが、彼によって呼び覚まされた欲望は消えなかった。やつれ、やせ細ったジェンカは隠れていても無駄なことに気付いた。現れたジェンカをニコラスは即座にホテルへと運んだ。しかし、ジェンカは怯え、戸惑い、思い返した。ニコラスは、泣き叫び怯える彼女とベットを共にする手段なら結婚しようと言いだした。ジェンカはニコラス自身が欲しかった。しかし、身体も心も彼に与えてしまったら、終わった時には自分は灰になってしまうだろう。そう思っても、彼を拒むことはできなかった。結婚式の朝、ジェンカはニコラスがウェディングドレスの色を勝手にピンクに変えていたことを知って、泣き崩れた。打ちのめされたジェンカは何とか式を乗り切ったが、寝室に運ばれた後衝動的にドレスを引き裂き踏みつけた。ニコラスは謝罪したが、まだ真実に気付いていなかった。ジェンカはニコラスにバージンであることを話そうとしたが、欲望にかられたニコラスの耳には入らなかった。ジェンカの抵抗に自制心を失ったニコラスは力ずくで彼女を奪った。明け方、ジェンカは寝室を抜け出し、海を眺めながら敗北を認めた。私は無駄に純潔を捨て、何も得られなかったのだ。引き返そうとしたジェンカの下の石が崩れ、意識を失う直前、ジェンカは誰かの声を聞いた。3日後、ジェンカは病院で目覚めた。ジェンカはニコラスに会いたくなかった。もう終わったことだ、国に帰して欲しいと告げてもニコラスは認めなかった。夢に見た黒く自分にのしかかる悪魔は彼だった。ジェンカは彼を許せるかどうかわからなかった。だが、彼を愛している。ニコラスはジェンカに妻の務めを果たせと言い続けた。欲望と罪悪感から、彼が自分を手放すことはないのだ。ジェンカは彼の元から逃げ出す覚悟を決め、機会を伺い、うまく島から抜け出すことに成功した。しかし、イギリス行きの航空便は半日なかった。時間はゆっくり過ぎて、帰途に着く前にニコラスに捕えられてしまう。激怒したニコラスはジェンカをベットに誘った。ニコラスは時間をかけて、彼女の肉体の征服者は自分だと思い知らせた。鼓動が納まった時、ジェンカには静かに涙を流すことしかできなかった。ニコラスの企みは成功し、ジェンカは子供を身ごもった。しかし、ジェンカの心の葛藤は続いていた。ニコラスの母はジェンカに、愛していると言わないからといって、愛していない訳ではないことを言い聞かせた。彼の父親もそうだったのだと。ジェンカは見ようとしていなかったものに気付き、プライドのために、人生を犠牲にするわけにはいかないと決意する。ジェンカはニコラスに愛していると告げた。ニコラスは、出会った時から彼女に夢中になり、追いかけ回したことを告白した。彼女のいない人生など意味はない、愛していると。


猪突猛進の男の話。噂に惑わされつつも、求めずにはいられない。こんなに酷い扱いを受けても許せる愛ってすごいわ!リンダ様の初期作品だそうです。