261 ダイヤモンドの海 リンダ・ハワード

ダイヤモンドの海 (MIRA文庫)

ダイヤモンドの海 (MIRA文庫)

ケルは休暇中だった。彼がここにいることはただ二人の人間しか知らないはずだった。彼のボートに近づいてくるクルーザーに気付き、手を振る女性を見て、ケルは危険を感じた。ケルは二発の銃弾を身に浴びながら、ボートを発進させた。しかし、振り向いたケルが見たものはまさに発砲されようとするロケット砲だった。間一髪、海に飛び込んだケルは彼らに見つからないよう、彼らから遠ざかり、陸を目指して泳ぎ始めた。
雑誌記者をしていたレイチェルは、自分が追っていた事件の首謀者に、爆弾を仕掛けられ、身代わりに夫が爆死してしまう。レイチェルは、事件を追い続け、犯人は逮捕され服役することとなったが、心に傷を負ったレイチェルは、仕事から退き、祖父の残した家で隠遁生活を始めた。町に二件の土産物屋の経営の他に、執筆と学校の講師を務めてはいたが、レイチェルの日常は平穏だった。しかし、ある寝苦しい夜に、海岸に出たレイチェルは、波間に人影を見つけ、海に飛び込んだ。必死で岸に男を引き上げたレイチェルは、肩と腿に銃創を見つけ、即座に警察は呼ばない方がいいと決断した。飼い犬の助けを借りて、男を家に運び込んだレイチェルは、知り合いの獣医に電話をかけ、診察鞄を買い物袋で隠し、急いで来て欲しいと頼んだ。ハニーはたじろいだが、できるだけのことはしてくれた。レイチェルは、眠り続ける男に薬を飲ませ、身体を拭き、母親のように看病した。FBIと名乗る二人の男が、人探しをしていると家を訪れた時も、レイチェルは、何も話さなかった。4日目に目覚めた男は彼女が何も知らないほうが安全だと言ったが、レイチェルは納得できなかった。レイチェルは彼を助けた時から、彼に惹かれていた。ケルも、夢うつつの時に、彼女の手を受け入れていたことで、傍にレイチェルがいることに慣れてしまっていた。一匹狼のケルはこれほど、自分の傍に他人を近づかせたことは初めてだった。クルーザーに乗っていた裏切り者のエリスがFBIを騙り、レイチェルをデートに誘ったことで、ケルの自制心は崩れた。ケルはレイチェルをベッドに押し倒し、性急に欲求を満たした。しかし、ケルの制止に耳を貸さず、レイチェルはデートに出かけ、知り得る情報をエリスから聞き出した。エリスのレイチェルへの執着に危険を感じたケルは唯一信頼できる友人グラントを呼び出した。グラントは急いでやってきたが、グラントを追って彼の妻が来ることは予定外だった。その頃、ようやくレイチェルがケルを匿っていると気付いた犯罪者デュブワたちが、翌朝襲って来る。銃声に気付いた隣の牧場主が援軍に現れて、デュブワたちは捕獲された。しかし、一瞬の隙をついて向けられた銃口に気付いたレイチェルは、ケルの前に身を投げ、銃弾を受けてしまう。ケルは自分のために、レイチェルの命を危険にさらしたことで、自分を許せなかった。ケルは何よりもレイチェルを愛していた。彼女が死ぬことは耐えられなかった。去って行ったケルをレイチェルは待った。そして、あちこちの情報網を使って、ケルと連絡を取ろうとしたが、彼から連絡が来ることはなかった。グラントの妻は、憤慨し、夫にケルに電話をかけさせて、レイチェルの妊娠を仄めかした。ケルは、思い悩み、レイチェルの家を訪ねたが、レイチェルを見た途端、もう彼女を手放すことはできないと思い知った。レイチェルはケルのいない毎日より、ケルといる一日の方がいいと言った。ケルは、レイチェルの傍らで生きることを選べば、他の全ての問題は難なく片付くと気付いた。結婚した方がいいかもしれないと言うケルの言葉に、それはプロポーズなのとレイチェルは聞いた。ケルは基本的には命令だと答えた。


ホットです。さすが、リンダさま!素敵なヒーローです。